生き残りかけた書店の集客作戦 アイデア、雑貨、ツイッターで勝負 – 山陽新聞 (会員登録)

Home » ツイッター » 生き残りかけた書店の集客作戦 アイデア、雑貨、ツイッターで勝負 – 山陽新聞 (会員登録)
ツイッター コメントはまだありません

コミック作家の直筆色紙が並ぶ「ブックランドあきば高島店」。ツイッターで客や作家、出版社とつながった

本を手に取ってもらえるようアイデアを練っている古書五車堂の浜本さん

雑貨販売に力を入れる宮脇書店総社店の店内。書店コーナーと違い温かみのある雰囲気に仕上げた

 インターネット通販の普及や大型書店の出店などに押され、苦境に立たたされる書店が増える中、岡山県内の「街の書店」が変わりつつある。企画展示やイベントの開催、ツイッターによる情報発信などで客の掘り起こしを図り、生き残りに知恵を絞っている。あの手この手の集客作戦を繰り広げる書店の動きを探った。

 「自分の人生がいとおしくなりますよ」「年を取るのが楽しくなりますよ」-。温かみのある手書きで「おたのしみブック」と書かれた袋の中にはそれぞれ文庫本一冊が入っている。タイトルは開けるまで分からない。表紙にある店主のコメントで選んでもらおうという商品だ。古本を取り扱う古書五車堂(岡山市中区浜)の店主浜本典子さん(50)が、本を手に取るきっかけを作ろうと考案した。店に並べるとツイッターに写真付きで投稿している。

 「一冊を売るために何とかしないといけないという危機感ですよ。毎日頭を悩ませています」と笑う浜本さん。大手書店で勤務した経験も生かし、5千冊ほどある在庫から「梅雨なんか忘れてしまう本」「過去の自分に読ませたい本」などのテーマで選んだ「日替わり一箱」を店に出したり、参加者同士で読んだ本を紹介し合う読書会を開いたりして、店のファン獲得に懸命だ。タイトルを隠して販売するスタイルは、イオンモール岡山にある未来屋書店の桜井恭子店長の目に止まり、「お悩み解決文庫」と題したコーナーを期間限定で同店内に開設。追加注文が来るなど好評だった。浜本さんは「本の良さを伝え続ければ気づく人がいると感じた。そういうチャンスをつかむためにまだまだチャレンジしたい」と意気込む。

 書店業界は全国的に苦しい。日本書店商業組合連合会が昨年6月にまとめた全国実態調査では、「ここ数年の経営状態が悪化した」とする回答が85%を超え、客の減少や雑誌の売り上げ低迷、ネット通販などをその理由に挙げた。岡山県内の書店数も減少の一途で、県書店商業組合によると加盟店数(4月1日現在)は67店。10年前に比べて半減した。同組合は「経営難や跡継ぎがいないことが理由だろう」とみている。

ツイッター見て聖地巡礼?

 コミック作家の直筆色紙をメインに据えた特集コーナーが所狭しと並ぶのは、郊外型書店のブックランドあきば高島店(岡山市中区国府市場)。展示された色紙の見学を目当てに「聖地巡礼」のように県外から訪れる客もいるといい、同店の片山憲作店長は「ポスターよりも直筆の色紙はアピール度が高い。収益の柱である雑誌の売り上げが落ち続ける中、うれしい傾向だ」と目を細める。

 作家やファンから一目置かれる存在になったのは、新刊やおすすめの本を紹介するツイッターがきっかけだった。投稿を見た地元ゆかりの作家から協力の申し出があり、色紙を展示。ツイッターの“拡散効果”で他の作家や出版社、ファンを一気につないだ。届けられた色紙は100枚を超えたほか、同店限定の購入者特典も提供してもらっている。コミック担当の石川博之課長は「宣伝をするにもお金がないから始めたツイッターだったが、ここまで広がるとは思っていなかった。在庫も多くなく、アクセスもあまり良くない店でも、買いに来てもらえることが分かった」と話す。

雑貨で客を刺激

 宮脇書店総社店(総社市井手)は3年前、1階スペースの3分の1を改装し、本格的な雑貨コーナーを新設した。おしゃれなバッグやマグカップなど小物だけでなく、書店に似つかわしくない冷蔵庫の中には岡山産のみそや米、コーヒー、米麹(こうじ)、茶葉などの食料品も並び、リピーターの主婦らの来店も目立つという。同店運営会社の三宅誠一社長は「いまではこのスタイルが定番になっているが、県内では先駆けとして取り組んだ。看板に掲げる『本ならなんでもそろう』ではネット通販に勝てない。雑貨を通して興味のある本に手を伸ばしてもらう店に変える必要があった」と経緯を説明する。

 書店のイメージを払拭(ふっしょく)するため、東京にある最新の書店や雑貨店などを視察し、木をふんだんに使った温かい雰囲気に仕上げた。商品も徐々に充実させ、いまでは3千点を超えた。雑貨と関連した本を並べるなど興味を持ってもらいやすい展示を心掛けているほか、週末にはお茶の入れ方講座や消しゴムハンコ作りなど雑貨と本を両方売り込むイベントも積極的に開いている。三宅社長は「雑貨は売り上げの1割程度だが、お客さんを刺激することで『また来たい』という店にし続けたい」と力を込める。

“本屋難民”のために

 お客のニーズに合わせて品ぞろえを工夫する店も。「stora skog HIROTANIYA(ストラスコッグヒロタニヤ)」(岡山市東区可知)は当初、話題の新刊などを置かず、絵本やユニークな書籍を販売する「本のセレクトショップ」を目指してスタートした。しかし、客層の中心は高齢者だったため、要望が高い健康関連本を増やすなど軌道修正した。

 大森知弘店長にとって意外だったのが、本の注文に来るお年寄りの多さだという。「車で出掛けられない、インターネット通販が使えないお年寄りは、新聞の切り抜きやテレビで見た本のメモを持参して注文に訪れる。“本屋難民”が深刻化しつつあると感じた」という。老眼鏡や量販店では買えない文具や雑貨なども置き、「なくなると困るといわれるような、地域に必要とされる店を目指したい」と決意を新たにする。

 一方、岡山市の表町商店街で140年近く書店を開いていた吉田書店は今年2月、店を閉め、同市北区伊島町の住宅街に移転。官公庁や学校などへの販売や配達などの外商に特化した。同書店は「商店街は人通りが減り、売り上げが出なかった。その代わり、美容院や病院など配達販売のニーズはいまだに高く、営業努力で顧客は増やせると考えている」としている。

 赤字だった書店「ウィー東城店」(広島県庄原市)の経営再建で知られ、書店主向けの講演活動も行っている総商さとうの佐藤友則代表(40)は「売れ残れば出版社に返本できる委託販売制度が変われば、本を置くだけの書店はなくなる運命だろう」と指摘。自身の店で年賀状印刷や宛名書きなども手掛ける徹底した御用聞きで、地域からの信頼と業績を回復させた経験から、「来た人が楽しい気持ちになってもらうことが繁盛店の鉄則。本を好きになる前に店を好きになってもらえるよう、業界が激変する前に、地域に合わせた店づくりの“実験”をしていくことが大切だ」と話している。

コメントを残す