学びを持ち運ぶ“履歴ポータビリティ”、次世代eラーニングが人材育成を変える(インタビュー&トーク)

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 転職した会社に、以前の会社で受けた研修などの学習履歴が引き継げない――。そんな状況が今後変わってくるかもしれない。

 eラーニングを企業内で実施する際、受講履歴の管理などにLMS(Learning Management System)と呼ぶ学習管理システムを利用することがある。こうしたシステムにも標準規格が存在する。デジタル教材とLMSの間で正誤判定や学習時間の記録などをやりとりする際の規格が「SCORM(Sharable Content Object Reference Model、スコーム)」である。米国防総省に属する標準化団体のADL (Advanced Distributed Learning Initiative) が制定した。2013年にはSCORMの次期規格として、ADLは「xAPI(Experience API、エックスエーピーアイ)」を公開。動画なども考慮し、多様な教育関連の経験なども含めた詳細な履歴を取得できるようにした。さらにADLは2016年6月、xAPI準拠のLMSの仕様である「cmi5」を公開した。

 いち早くcmi5に対応したLMSのエンジンを開発し、2016年12月27日にそのプロトタイプ版をリリースしたジンジャーアップの代表取締役 井手啓人氏にその理由や今後の展望などを聞いた。


なぜxAPIに取り組むのか。

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ジンジャーアップ 代表取締役 井手啓人氏

 以前から“履歴ポータビリティ”(学習履歴を個々人に紐付けて個々人が持ち運ぶ)を何とかして実現できないかということを考えていた。xAPIが公開される以前は、例えば会社を辞めて転職した際、以前の会社での学習履歴を転職先に持ち込むといったことは考えられなかった。

 xAPIを使えば、個人が今までやってきた経験値、個人がアピールしたいこと、「こういうことをやっていましたよ」ということをデータとして持ち運べるようになる。xAPIによって公平な人材の評価ができるようになると思い、真っ先に取り組んだ。

 xAPIのシステムは、LRS(Learning Record Store)と呼ぶデータベースを用いて、多様な学習履歴を管理する。LRSで管理している学習や経験の履歴は統一方式で記録されているため、他社のLRSと共有したり、他社のLRSに容易に移動したりできる。

 今後は企業が学習履歴を持つのではなく、個人が学習履歴を持ったまま(別の企業などに)移れるようになると思っている。ただし、技術的にはできても、(履歴ポータビリティーを実現するには)制度的なことも考えなければならないだろう。まずはメタレベルでのポータビリティに取り組んでいこうと思っている。

国内でxAPIを採用している企業はあるのか。

 米国や英国では日本よりも1年から1年半先に進んでいるので成果が出てきている。日本では我々の顧客が採用しており、現状は5~6社が導入している。

一方で(xAPIの前身の規格である)SCORM対応のeラーニングシステムは多い。

 我々が(xAPIに)対応したらみんな追いかけてくると思ったが、今のところはそうはなっていない。eラーニングにおいてはxAPIのような高スペックは今のところ必要ないと判断した人が多いようだ。例えば動画の詳細履歴は取得できなくても、それ以外の情報の取得はSCORMで十分と判断したのだと思う。

 動画はxAPIを使わなくても、ストリーミング配信サービスとAPI経由でつなぐことで、スタート地点やどこで止めたかといったことは分かる。通常のSCORM対応のシステムでも、既にこうした対応はできている。「ここまでできれば(SCORMで)十分」というのがeラーニング業界の通例になっている。

 ただこうしたやり方の場合、学習者が1人なら「ここを見ていないから、見直した方がいい」といったアドバイスを管理者ができるが、(学習者が)1000人、1万人に増えてくると、例えば「ここを全然見ていない、ここを繰り返し見ている」ということの意味合いが1人の場合とは異なってくる。

 学習者の8割が見ていない個所があったら、「そこをカットすればいい」といった判断ができるし、多くの学習者が繰り返し見ていたら、そこが面白いからか、もしくは分かりにくいからかといった判断ができる。分かりにくいのであれば、「この部分をストレッチして、分かりやすく説明しよう」といった対応もできる。(xAPI以前の)今までのLMSではこうした全体の傾向を見ることができなかった。ある部分を見たのか、見ていないのかが分かるだけで、積算して傾向を見れなかった。

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