クリック稼ぎに事実演出 SNSに過激動画、逮捕者も – 日本経済新聞

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 ユーチューブやインスタグラムなど、交流サイト(SNS)の投稿を巡るトラブルが後を絶たない。過激な動画をきっかけに、事件に発展したケースもある。誰もが発信できる手軽さの一方で、使い方を一歩間違えれば、犯罪につながる危険性をはらむ。なぜ、人は過激な動画の投稿に走るのか。

 福井駅(福井市)前の路上。30代の男が警察官に話しかけ、直後に白い粉が入った袋を落とす。拾い上げると、突然走り出し、パトカーが追跡する白昼の「大捕物」となった。この様子が動画投稿サイト「ユーチューブ」に投稿されたのは8月末。1週間で120万回以上が再生された。

 粉は覚醒剤と見せかけたグラニュー糖で、大がかりないたずら。男はSNSで「以前のイタズラ動画は(再生回数が)上がらなかったけど、覚醒剤ドッキリはガンガン上がっていますね」などと書き込み、人を欺いて業務を妨害した偽計業務妨害容疑で逮捕された。罰金刑を命じられ、12月に刑事裁判が開かれる。

 チェーンソーで配達員を脅した男、おでんツンツン男……。ネット上では過激動画の投稿の摘発が目立つ。その舞台は、2005年に米国で誕生したグーグル運営の「ユーチューブ」。利用規約などに違反しない動画には広告が表示され、広告料の一部が投稿者に支払われる。

■年収1億円級も

 こうした投稿でお金を稼ぐ人は「ユーチューバー」と呼ばれ、「2年程前までは再生回数1件当たり0.1円。最近はその10分の1程度」(業界関係者)という。チェーンソーの男も月10万円程度の収入を得ていた。再生回数40億回超の動画もあり、トップクラスの年収は1億円を超えるとされる。現在80カ国以上で数百万人が動画から収益を得ているとみられる。

 過激な投稿に駆り立てる要因は2つある。1つはスマートフォンの拡大に伴う動画広告市場の拡大。サイバーエージェントの推計では22年の動画広告の市場規模は15年比で約5倍の2918億円。再生回数が伸びるほど広告料収入が増えるため、より過激な投稿に走るというわけだ。

 もう一つは投稿者間の競争激化。「ジャンルを統一する」「しっかり編集を」。ネット上には動画投稿で稼ぐコツの書き込みがあふれ、東京未来大の出口保行教授(犯罪心理学)は「注目を浴びるには犯罪すれすれしかないと思ってしまうのではないか。一瞬でヒーローになりたい願望を持つ人もいる」と分析する。

■インスタ映え求め

 軽い気持ちの投稿が事件化するケースも。昨春、40代男性が和歌山城天守閣の屋根に許可なく入って撮影した写真を公開、軽犯罪法違反容疑で書類送検された。投稿に使ったのは、知人らと写真などを共有するインスタグラム。男性は「友人に自慢したかった」などと動機を明かした。

 インスタは世界で8億人が利用。日本でも10~30代を中心に人気だ。高評価を得られる見栄えの良い写真は「インスタ映え」と呼ばれ、男子大学生(21)は「友人から話題になる『インスタ映え』する写真を撮ろうと、ついつい常識から外れてしまう気持ちは分かる」と漏らす。

 視聴者の目を引く投稿が犯罪に当たるのか否かの線引きはどこにあるのか。投稿自体が罪に問われるわけではない。一般的に社会常識に逸脱したり他人に迷惑をかけるなどの行為そのものが処罰対象となる。過去の摘発例をみれば(1)私有地などに無断で侵入する(2)車の暴走など交通ルールを破る――などがある。

 日本では過激な投稿自体を処罰する法律はなく、刑法の住居侵入、道路交通法違反など様々な法令を適用しているのが実情だ。楽しむはずのSNSは行き過ぎれば、危険な落とし穴が待ち受ける。

 過激投稿のみならず、フェイクニュース(偽のニュース)で閲覧回数を伸ばすことも世界中で問題化。トランプ米大統領が誕生した昨年の選挙でも「ローマ法王がトランプ氏支持を表明」などのニュースがあふれた。クリック回数がお金に化けるという現状には、事実を曲げる危うさが潜むことも忘れてはならない。(平野慎太郎)






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