傘をタダで貸してくれる自販機ってなんなの? 高返却率の謎に迫った

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ダイドードリンコのレンタルアンブレラは返却率70%

2017年06月18日 12時00分更新

文● ナベコ

ダイドードリンコのレンタル傘。3月に大阪市内で撮影。

 こんにちは。春の歓送迎会シーズンで酒を飲み過ぎて傘をなくしてしまったので、少し前にあわてて傘を買った記者ナベコです。季節はすっかり梅雨。毎日天気予報のチェックが欠かせません。

 傘と言うと飲料メーカーのダイドードリンコは傘に関する攻めた取り組みを行なっています。ダイドードリンコの「レンタルアンブレラ」は飲料自動販売機に設置したレンタルBOXの傘を無償で貸し出しするサービス。レンタルする時に飲料の購入が必須というわけではありません。

傘を無償で貸し出してくれます。

 レンタルアンブレラは2015年10月から試験的にスタートし、2016年には関西エリアにて約130台の自動販売機で展開。今年度は新しく、関東(東京、神奈川、埼玉、千葉)と愛知県にエリアを拡大し、最大340台の自動販売機を展開する見通し。気になるレンタル傘の返却率は、ダイドードリンコが検証したところ約70%だったそう。

 個人的に傘を何度か置き引きされたことがある記者にとっては、70%とは信じられない良い数字。この返却率、本当なの?
ダイドードリンコのレンタルアンブレラの企画推進を担当するコーポレートコミュニケーション部の梅垣真哉氏に自信のほどを尋ねてみました。

返却率が高い設置場所の条件とは?

レンタルアンブレラ設置の自販機。

地元に根付いた商店街では返却率高め。

駐車場でもよく使われているそう。


――無償で傘を貸し出しするレンタルアンブレラサービスの返却率が70%というのは本当ですか?


梅垣氏
:本当です。既存で設置していた関西エリアで検証したところ平均して約70%でした。


――都内ではどのような場所の自販機にレンタルBOXを設置するのでしょうか?


梅垣氏
:地元に密着した商店街内の自販機や、オフィスの敷地内の自販機にすでにいくつか設置しています。


――エリアを拡大することで返却率が低くなるという懸念はないのでしょうか?


梅垣氏
:関西エリアで実施して、返却率が高いロケーションの条件というのをある程度把握できてきたので、条件を満たすロケーションの自販機に設置するようにしています。エリアが変わっても条件を満たしていれば返却率が著しく変動することはないと予測しています。


――返却率が高いロケーションというのは、具体的には?


梅垣氏
:ふたつありまして、ひとつは商店街といった地元の方がよく往来される場所にある自販機。もうひとつはオフィスの敷地に設置してある自販機です。


――というと、繁華街での返却率はよくないのでしょうか?


梅垣氏
:観光地や繁華街など、一度訪れた方が再度訪問されることのない場所は返却率が低いため、昨年から積極的には設置していません。傘を借りた方が返さない理由は、返したいけど同じ場所を通らないので返せないという事情が大きいものと認識しています。


――ちなみに、返却されていない3割の傘はどのように扱われていると想定していますか?


梅垣氏
:詳細はわからないので想像ですが、ご自宅の傘置き場に入ったままになっているケースが多いものと思います。

傘を返したいけど返せない場合は……

同じ場所を通らないと返すのが難しい、というのが傘未返却の最大の理由?


――レンタルした傘を同じ場所に返しにいけないという場合はどうしたらいいでしょうか?


梅垣氏
:違う自販機に設置されたレンタルBOXに返却されても大丈夫です。そのようなケースで、本来レンタルBOXは7本がマックスなのですが、もう1本入る部分があるので、最大8本傘が入っていたことがありました。


――壊れてしまった場合は?


梅垣氏
:特に想定していないので、こうしていただきたいという規定はないです。かつて、利用された方が傘を壊してしまったということで、別の傘を手紙付きで戻されたことがありました。そこまでしていただかなくてよいのですが、借りた傘を返したいという強い想いを持たれている方がいらっしゃるということを実感できたケースでもあります。

レンタルアンブレラの利用は簡単。自販機に設置されたレンタルBOXから傘をレンタル→後日返却。以上。

売上の効果検証はしていない


――公共の場の返却率も上がるといいですね。ところで、なぜ自販機が“傘をレンタル”なのでしょうか? 飲料とはまったく関係ないように思えますが。


梅垣氏
:レンタルアンブレラは、自動販売機の飲料補充、メンテナンスを担当するダイドービバレッジサービスのなにわ営業所社員のアイデアです。現場でお客様の様子を一番近くで見ているからこそ生まれた「突然の雨降り時に傘を提供したい」という地域貢献の発想です。


――レンタルBOXを設置したことで自販機の売上は伸びたりしたのでしょうか?


梅垣氏
:売上アップを目的にしている訳でないので、売上への効果検証は実施していません。

レンタル傘の一部は、鉄道会社の協力で提供された忘れ物傘を利用。


――利益を意識していないのですね。利用しているお客さんの声はどうでしょうか?


梅垣氏
:「傘を借りてみた」などの喜びの声がSNSでも見られます。またオーナー様側の声で、例えば店舗様の自販機にある場合、「この傘なに? おもしろいね」などお客様から話しかけられるとも聞いています。コミュニケーションのきっかけにもなればうれしいと思っています。


――自販機が傘を貸してくれるなんてびっくりしますけど、喜ばれますよね。


梅垣氏
:ダイドードリンコは自動販売機での売上が全体の構成比で約8割。自販機を販売の主軸に据えています。だからこそ、自販機でできること、お客様に喜ばれることの可能性を常に考えています。レンタルアンブレラは今年で3年目ですが、今年も攻めていきます。


 梅垣氏は傘未返却の理由は、自販機がその人にとって再訪しない立地であるため、つまり「返したいけど返せない」ケースが多いのでは、と語りました。私ごとですが、かつて人から借りた傘を引っ越しの関係で返す機会を損なってしまい、申し訳ないという想いがずっと残っています。性善説はあながち見当違いではないのかも。傘を必要としている人に傘を貸してあげよう。発想こそシンプルですが、ものを言わない自販機に託して実行するには勇気が必要だったのではないかと思います。

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