現場はこうやってデータを偽装する(ニュース解説)

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古谷賢一=ジェムコ日本経営本部長コンサルタント

 神戸製鋼所の品質データ偽装と日産自動車の検査不正が発覚し、日本の製造業が培ってきた品質の信頼に揺らぎが生じている。法令遵守(コンプライアンス)問題と片付けるのは簡単だが、「高い倫理観に基づいた職場風土を求めるだけではこの問題は解決しない」と主張するのが、「技術者塾」において「半年でQCDを確実に高める 製造リーダーの実務と要点」の講座を持つ、ジェムコ日本経営本部長コンサルタントの古谷賢一氏だ。

 この問題を解決に導くには、「等身大の現場」を知る必要がある。同氏が生産現場(以下、現場)の不正の実態と解決策を前編と後編の2回に分けて解説する。まずは前編で、現場の不正行為の実態を取り上げる。(近岡 裕=日経テクノロジーオンライン)

 今、産業界に激震が走っている。大手鉄鋼メーカーの一角を占める神戸製鋼所で、データの改ざんや捏造といった不正行為が長年にわたって組織ぐるみで行われてきたことが発覚した。同時期に、大手自動車メーカーの日産自動車が、必要な資格を保持していない作業者が不正な検査を行っていたことが明るみに出た。日本の製造業への信頼が根幹から揺らいでいると言わざるを得ない。

 今後、両社が誠実に調査を行うことでさまざまなことが明らかになり、原因の詳細が見えてくるだろう。現在(2017年10月22日の執筆時点)までの報道によると、職場の風土に原因があることが報じられている。例えば、2017年10月18日付の日本経済新聞電子版は、「鉄鋼やアルミ・銅といったそれぞれの事業部門が縦割りで硬直化し、経営陣による統治が及びにくい体制になっていたことが、不正の温床になった」と指摘している。加えて、同紙は「生産現場に納期へのプレッシャーを感じさせる経営の仕方があったのでは」との問い掛けに対し、神戸製鋼所会長兼社長の川崎博也氏が「ないとは言えない」と絞り出すように答えたと報じている。

 この種の問題が発生すると、「コンプライアンス(法令遵守)の軽視」という企業倫理の問題や、社内で異論を唱えにくい企業風土、縦割り組織によるガバナンス(企業統治)の欠如、あるいは納期や利益といった実利優先の経営体質が原因である──などといった指摘が出てくる。これらの指摘には誰も異論はないだろう。実際に不正行為に関与した実務者の直接的な問題にとどまらず、企業の本質的な問題に対する適切な指摘だからだ。筆者も、経営者や工場の管理・監督者に対して、強い遵法意識と倫理観を要求することには大賛成である。

 ところが一方で、強烈な競争環境のプレッシャーの中に生きる企業とその現場に対し、「利益優先の企業経営はダメだ」と言い切ることはできない。そこには矛盾や葛藤があるからだ。現場が抱えるこうした矛盾や葛藤に背を向けたまま、経営者が高い倫理観を持って襟を正すだけでは、現場で実際に発生している不正行為の解消が難しいことは容易に想像がつく。

 では、どうすればよいのか。その対策を考える上で、まず現場の不正行為の「生々しい実態」を把握することから始めてみよう。

 多くの不正(意図的に行われる不適切な操作)は、主に労力や時間を節約するために行われる。実は、現場における不正行為は神戸製鋼所と日産自動車だけが抱える問題ではない。今回、両社が問題を起こしたことで世間の耳目を集めている「検査作業」を対象に、よくある不正行為を以下に紹介しよう。






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